"Die Meistresinger von Nurunberg",Prelude to Act T(楽劇『ニュルンベルグのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲) 2005年記念祭公演
作曲 Wilhelm Richard Wagner
作曲時期 晩年4大傑作の1つ
初演 1868年2月(ハンス・フォン・ビューロー指揮の下)
所要時間 9:41
1949年 / ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の録音
編成
Fl Picc Ob Cl Fg Hr Tp Cor Tb Tub Timp Harp トライアングル シンバル
2 1 2 2
(inB♭)
2 4
(inF)
3
(inF×2/inC)
× 3 × 1
(C,G)
5 1 1 1
'・*:★独断と偏見に満ちた雑文的楽曲解説★:*・'
ーグナーといえば音楽史にその名を刻んだロマン派期の異端児である。
「交響曲の時代は終わった!!」のひとことからもわかるように彼は革命家である。
音楽とは総合芸術であるべきだという彼の持論から非常に大規模なオペラが大量に作曲された。
いや、この規模の大きさからオペラとも呼ぶことはできずワーグナー作品を人々は『楽劇』と呼んだ。

にワーグナーの名前を音楽史に刻んだのは晩年4大傑作と呼ばれる「ニーベルングの指環4部作」「トリスタンとイゾルデ」「パルシファル」、そしてこの「ニュルンベルグのマイスタージンガー」である。ニーベルングの指環は全4つの楽劇からなる音楽史において類を見ない非常に大規模な作品である。主に一つの楽劇を1日でやり計4日間かかるというとんでもない作品である。トリスタンとイゾルデは、これは人によるかもしれないがワーグナーの最高傑作である。なぜならこの作品を書いているとき彼は非常に幸せであり彼が生み出した'恋愛'の産物である。音楽的にもストーリー的にも最も充実した作品である。

てこのマイスタージンガーであるがワーグナーが書いた楽劇の中でも唯一の喜劇である。いまさら説明するまでも無いがニュルンベルグは場所、マイスタージンガーは親方歌手という意味である(英語に直すとマスターシンガーmaster singer?・・・ではなくミンネジンガーからきている)。中世ドイツではこのマイスタージンガーというものが流行っていたらしく実際歌手じゃない人々が歌唱力をきそうものである。この楽劇は初演より好評で特にこの第1幕への前奏曲への反響はすさまじいものだったという。

台は中世ドイツのある町。組合長ポーグナーはこのマイスタージンガーのコンクールにおいて優勝者に愛娘エヴァを与えると宣言する。かねてからエヴァに恋慕していた騎士ワルターは勇み足でそのコンクールに出場するが、町の書記ベックメッサーはコンクールでワルターに悪い点数をつけ自らがエヴァの夫となろうと野心を起こす。それを見かねた靴屋ハンス・ザックスはワルターを応援し見事ワルターが優勝するのである。実はハンス・ザックスは以前からエヴァを恋い慕っていたのだがワルターの才能に惚れこみ自らの恋を捨てワルターの支援者となるなんとも寛大で器の大きな人物なのである。なんとも平凡なハッピーエンドで終わるのだがこの作品を通してなにかワーグナーの哲学のようなものがにじみ出ているらしい。興味のある人はぜひ楽劇自体を見ることをお勧めする。

てこの前奏曲であるが、晩年ともなるワーグナー作品では彼の独自の手法である「ライトモティーフ」「無限旋律」が巧みに使用されている。いくつもの主題が顔を出しそれぞれ違ったキャラクターで曲を構成する。主となるのが一番初めの大合奏で奏される4/4 Moderato moltoの「マイスタージンガーのテーマ」である。これは中間やフィナーレなどで形を変えいくつも登場する。その後に現われるのが木管楽器によって甘美に奏される「愛のテーマ」である。美しい特有な裏拍が特徴的である。その甘美を押しのけ勇ましい「マイスタージンガーの行進曲」が金管のファンファーレで奏される。このテーマはフィナーレも形成しており非常に聴きやすいテーマである。この後からは「情熱の動機」「嘲笑の動機」など楽劇の内容を表すような数々のテーマが現われる。それらのテーマを通して前述の通り「マイスタージンガーの行進曲」によって華々しく曲を結ぶ。

MIDI(楽劇『ニュルンベルグのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲)

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